こんにちは!kappa(@kappa10.01)です。
ISO感度を上げると写真が明るくなる、下げると暗くなる。多くの人がこの感覚的な理解でISO感度を使っていると思います。実際、カメラの背面液晶やファインダーの中でも、ISO感度を上げれば画面はたしかに明るく見えます。
しかし、明るくなるといっても、ISO感度を上げたら光が実際に多く取り込まれるわけではありません。ISO感度が変えているのは、レンズを通ってセンサーに届く光の量そのものではなく、その後の信号処理の話です。この記事では、ISO感度が実際に何をしているのかを仕組みから解説しようと思います。
露出の三要素とISO感度の位置づけ
写真の明るさは、絞り・シャッタースピード・ISO感度という三つの要素で決まります。これらの三要素は並列に並べて語られることが多いですが、実際には性質の異なる二つのグループに分かれています。
絞り・シャッタースピードが決めるもの:受光量

絞りとシャッタースピードは、どちらもセンサーに実際に届く光の量、つまり受光量を左右する要素です。
絞りは開口の大きさを変えることで、単位時間あたりにセンサーへ届く光の量を調整します。開口が大きくなれば、同じ時間でもより多くの光が通過します。一方でシャッタースピードは、センサーが光を受け取る時間の長さを調整します。同じ明るさの光であっても、受け取る時間が長ければ、センサーに蓄積される光の総量は増えます。
絞りとシャッタースピードの組み合わせによって決まる、センサーが実際に受け取った光の総量を露光量と呼びます。
ISO感度が決めるもの:受光後の信号処理

一方でISO感度は、絞りやシャッタースピードとは働くポイントが異なります。ISO感度が変わっても、レンズを通ってセンサーに届く光の量そのものは変化しません。ISO感度が操作しているのは、センサーが光を受け取ったあとの段階、つまりセンサーが光を電気信号に変換したあとの処理です。
つまり、絞りとシャッタースピード、ISOは露出の三要素として並べて説明されることが多いですが、ISO感度だけは性質的に異なるということになります。絞りとシャッタースピードは光をどれだけ集めるかを決める要素であるのに対し、ISO感度は集めた光をどう扱うかを決める要素です。以下では、この受光後の処理が具体的に何をしているのかを解説しようと思います。
ISO感度が変えているのは量ではなく増幅率
センサーが記録する電気信号とは
センサーの各画素には、フォトダイオードと呼ばれる素子が配置されています。フォトダイオードは、光が持つエネルギーによって電子を弾き出す性質を持っており、光が当たっている間、その画素にはどんどん電子が蓄積されていきます。露光時間中にその画素へ届いた光子の数が多いほど、蓄積される電子の数も多くなるため、電子の数は画素が受け取った光の量をそのまま反映した量になります。
シャッターが閉じて露光が終わると、各画素に溜まった電子の数がその画素の生の信号になります。ポイントは、この段階での電子の数は、ISO感度の設定によって変化しないということです。電子の数を決めているのは、あくまで絞りとシャッタースピードによって決まる受光量であり、ISO感度はまだこの時点では何も操作していません。
増幅(ゲイン)という操作の中身
蓄積された電子は、そのままではまだデータになっていません。各画素は蓄積した電子の数を電圧に変換する回路を持っており、電子が多いほど高い電圧として読み出されます。ISO感度が操作しているのは、この電圧を増幅する段階です。読み出された電圧を一定の倍率で引き伸ばす操作をゲインと呼び、ISO感度の設定値は、このゲインの倍率と対応しています。ISO感度を上げるということは、この増幅の倍率を上げるということになります。
この増幅には、大きく分けて二つのやり方があります。一つは、電圧信号をアナログ回路の中でそのまま増幅してから、デジタルの数値に変換する方法で、アナログゲインと呼びます。もう一つは、電圧をまずそのままデジタルの数値に変換したあとで、その数値を演算によって大きくする方法で、デジタルゲインと呼びます。
多くのカメラでは、ある程度までのISO感度の上昇はアナログゲインで、電圧信号そのものを底上げする形で処理されます。一方、機種ごとに定められた上限を超えてさらにISO感度を上げる場合には、アナログ回路側の増幅だけでは足りず、デジタルゲインによる数値上の底上げが加わることがあります。この違いは、後述するISO不変性という考え方に関わってきます。

ISO感度を上げるとノイズが増える理由
ノイズの正体

写真のノイズの原因は、主に二種類の物理現象分けられます。
一つは光子ショットノイズです。光は一定の強さで連続的に届いているように見えても、実際には光子という粒の集まりが不規則なタイミングで届いています。そのため、同じ明るさの光を同じ時間だけ受け続けても、実際にセンサーへ届く光子の数は毎回わずかに変動します。
この変動の大きさは、届いた光子の数の平方根にほぼ比例することが知られています。たとえば平均で10,000個の電子が溜まる明るい領域では、変動幅はおよそ10,000の平方根である100個で、信号に対する割合は1%(100/10,000)程度にとどまります。一方、平均で100個しか電子が溜まらない暗い領域では、変動幅はおよそ10個となるため、信号に対する割合は10%(10/100)に達します。つまり、受光量が少ない領域ほど、信号に対するゆらぎの割合が大きくなり、これが粒状のノイズとして見えてきます。

もう一つは読み出しノイズです。これは光そのものに由来するのではなく、電子の数を電圧に変換し、読み出していく回路の中で加わる小さなノイズです。回路を構成する素子は完全に理想的には動作せず、電圧を読み出すたびにごくわずかな誤差が上乗せされます。この誤差の大きさは、受光量が多いか少ないかにほとんど関係なく、ほぼ一定の量として生じます。
増幅は信号とノイズを同時に持ち上げる
重要なのは、これらのノイズが生じるタイミングです。光子ショットノイズは、電子が画素に溜まっていく段階、つまりISO感度による増幅よりも前の時点で、すでに信号の中に組み込まれています。増幅という操作は、電子の数を電圧に変換したあとの値を一律に引き伸ばすだけなので、信号として記録された電子の数と、その中にすでに含まれているゆらぎを、同じ倍率でまとめて引き伸ばすことになります。
ISO感度を上げて撮影時に明るくしても、あるいは低いISO感度のまま撮ってあとから現像ソフトで明るく持ち上げても、暗部にもともと含まれていたゆらぎは同じように引き伸ばされ、粒状のノイズとして見えてきます。増幅そのものが新しくノイズを生み出しているわけではなく、もとから存在していた小さなゆらぎを、見える大きさまで拡大しているだけと言えます。
つまり、撮影時にISO感度を上げて明るくするのと、低いISO感度のままRAWで撮っておいてあとから同じだけ明るくするのとで、結果はほとんど変わらないはず、ということになります。この考え方はISO不変性と呼ばれています。
ISO不変性という考え方
実際に多くのカメラでは、ISO感度を上げて撮った画像と、低いISO感度のままRAWで撮っておいてあとから現像ソフトで同じだけ明るくした画像とで、ノイズの量にほとんど差が出ないことが確認されています。
撮影時にISOを上げる場合とRAWで後から明るくする場合の違い
具体的に考えてみます。ISO 3200で撮影した場合と、ISO 800で撮影した同じ露光量の写真をあとから現像ソフトで2段分(4倍)明るく持ち上げた場合を比べます。どちらも最終的に画面に表示される明るさは同じになりますが、明るくする操作が行われるタイミングが異なります。前者はカメラの中でアナログ回路が電圧を増幅する段階で明るくなり、後者はカメラの外、現像ソフトの中でRAWデータの数値を演算によって明るくします。

ISO不変性が成り立つセンサーでは、この二つの結果はほとんど見分けがつきません。理由は上述の通りで、ノイズの主成分である光子ショットノイズは、増幅がどこで行われるかに関係なく、すでに電子の数の中に組み込まれた形で存在しているからです。増幅をカメラの中で行おうと、あとから現像ソフトの中で行おうと、引き伸ばされるゆらぎの量は変わりません。
これは撮影上重要な知識となります。もしカメラがISO不変性を備えているのであれば、撮影時にISO感度を細かく調整する手間をかけなくても、ある程度低いISO感度のままRAWで撮っておき、あとから現像で明るさを調整するという選択肢が取れるからです。
不変性が成立する範囲と、成立しない要因
ただし、ISO不変性はすべてのカメラ、すべてのISO感度の範囲で完全に成り立つわけではありません。ここで関わってくるのが、アナログゲインとデジタルゲインの違いです。
センサーの読み出し回路には、電子の数を電圧に変換したあと、その電圧を読み出してデジタルの数値に変換するまでの間に、複数の回路段階があります。読み出しノイズの一部は、この変換の過程、つまりアナログゲインによる増幅よりもあとの段階で加わります。そのため、アナログゲインをかけてから変換する場合と、変換したあとにデジタルゲインだけで明るくする場合とでは、この読み出しノイズが増幅されるタイミングが異なります。
アナログゲインは、読み出しノイズが多く発生する前の段階で信号を底上げするため、変換後に加わるノイズの影響を相対的に小さくする効果があります。逆に、低いISO感度のまま撮ってあとからデジタル的に明るくする場合、この読み出しノイズも信号と一緒に、増幅することになるため、相対的にノイズが目立ちやすくなります。
多くのカメラは、これに対応するため、二段階のアナログ回路を切り替えるデュアルゲインという仕組みを持っています。低いISO感度側では標準的なゲイン回路を使い、ある一定のISO感度を超えると、読み出しノイズをより抑えられる回路に切り替わります。
つまりこの切り替えポイントの前後では、ISO不変性は成り立たないことになります。切り替えポイントより低いISO感度の範囲でRAWをあとから明るくすると、切り替えポイントを超えてカメラ側でISO感度を上げて撮った場合に比べて、読み出しノイズの影響がやや大きく残ることになります。逆に、切り替えポイントを超えた範囲同士では、ISO感度をどこに設定しても読み出しノイズの効き方はほとんど変わらないため、この範囲内ではISO不変性がよく成り立ちます。

具体的にどのISO感度が切り替えポイントにあたるかはセンサーの設計、つまり機種によって異なり、メーカーが公表していない場合がほとんどです。海外のセンサー測定サイトなどでカメラごとの読み出しノイズの変化を確認できることもありますが、実用上は、ISO不変性は常にどのISO感度でも成り立つものではなく、ある範囲の中では近い結果になりやすい性質として捉えておくのが実態に近いといえます。
拡張感度(ISO Lo/Hi)はなぜ別枠なのか
カメラのISO感度設定を見ると、通常の範囲の外側に、Lo1.0やHi2.0のような拡張感度が用意されていることがあります。この拡張側の感度は、これまで説明してきた通常のISO感度の増幅とは、仕組みが根本的に異なります。
拡張側では増幅の仕組みが異なる
まず拡張Lo側です。センサーには、その回路構成上、もっともダイナミックレンジが広くなる下限のゲインがあり、この下限のゲインに対応するISO感度が基準ISO感度と呼ばれます。ゲインをこれ以上下げることは回路上できないため、基準ISO感度よりさらに低い拡張Lo側の感度は、増幅を弱めることでは実現できません。
かわりに使われているのが、基準ISO感度のまま実際にはやや多めに露光しておき、そのぶんをあとから数値演算でマイナス方向に引き下げるという方法です。結果として画面の明るさは指定した拡張Lo感度に対応する明るさになりますが、内部的には基準ISO感度よりも多い光量を受け止めた状態から出発しているため、本来ならまだ余裕があったはずのハイライト側の階調が、先に飽和してしまう可能性があります。拡張Lo側の感度は、増幅を弱める操作ではなく、意図的に多めに露光してからあとで引き下げる操作だと言えます。
次に拡張Hi側です。通常のISO感度の上限は、アナログ回路が増幅できるゲインの上限によって決まっています。この上限を超えてさらにISO感度を上げる拡張Hi側では、アナログ回路側の増幅はすでに限界に達しているため、デジタルゲイン、つまりAD変換によってすでに数値化されたデータを演算で引き伸ばす処理だけが行われます。
この操作は、通常のISO感度の範囲で起きているような、読み出しノイズの影響を相対的に抑える効果を持ちません。数値をそのまま引き伸ばすだけなので、ノイズだけでなく、階調の刻み自体が粗くなる影響も目立ちやすくなります。多くのカメラで拡張Hi側の感度がRAW形式での撮影に対応していなかったりするのは、この仕組みの違いによるものです。
このように、拡張感度は通常のISO感度の延長線上にあるように見えて、実際には増幅率を素直に上げ下げしているわけではありません。基準ISO感度を挟んだ通常の範囲でのみ、ここまで説明してきた増幅率としてのISO感度という理解がそのまま当てはまります。
まとめ
ISO感度は、絞りやシャッタースピードと並んで露出の三要素として扱われますが、実際に操作しているのは受光量ではなく、センサーが受け取った電気信号の増幅率です。
増幅はすでに信号の中に含まれている光子ショットノイズを信号と一緒に引き伸ばすだけで、新たにノイズを生み出しているわけではありません。そのため、多くのカメラでは、ISO感度を上げて撮影するのと、低いISO感度のままRAWで撮ってあとから明るくするのとで、結果に大きな差が出ません。これがISO不変性です。ただし、この不変性はセンサー内部のアナログ回路とデジタル回路の切り替わり方によって成り立つ範囲と成り立たない範囲があり、拡張感度(ISO Lo/Hi)はさらに別の仕組みで実現されています。
写真のノイズを左右しているのは、ISO感度そのものではなく、絞りとシャッタースピードによって決まる露光量です。撮影時には、まず絞りとシャッタースピードで確保できる露光量を優先し、それでも足りない明るさをISO感度で補うという順番で考えると、ISO感度という機能の役割を実態に沿って扱えます。

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